nest [凛]
｢ここは無くなっちゃうんですよね。写真を撮らせてもらっていいですか｣
｢どうぞどうぞ｣
｢ありがとうございます、へぇー本当に立派な柱ですね。あっ、そうだ
おばさんも一緒にどうです、写しませんか｣
｢そう｣
｢エーとすみません、写していただけますか｣
と、彼女からは持ってきていたコンパクトデジカメラを手渡されていた。
｢ハーイ、では写します｣
とは少し前に普段だったらシャッターを切っている。ところが今日は、この機器に触れるのが初めてであり
ファインダー越しにでも良いからもっと見つめていたかった、らしく、少し手間取らせた感さえも伺えた。
これほどまでも美しくなっていらっしゃるのに、何故今ここにこうしているのかが不思議にさえ思えた瞬間だ。
起床時に虫の知らせを聞いていたはずなのに、なんて愚かな、無視をしたのであろうか。
｢そうだ、今度は外で写しましょう｣
弾けんばかりに彼女は外へ飛び出す。すると家人、家の中にいた全員は外へと出ていた。
｢あれが一番大きな木ですよ｣
と聞いた彼女はその木が写せる山と道路の境界まで一人で行き、スマートメディアへ記録を残している。すると
その様子を見ている間に他の方々は家の中へ知らぬ間に引き返し、ふと気が付けば二人きりになっていた。
｢写真、撮ってあげる｣
突然この様に話しかけられ、思ってもみなかった事だけに戸惑いを感じつつも
｢エッ、良いんですか、喜んで｣
と答えていた。その時、彼女にも少しの照れの様なしぐさ、気配をも感じてしまう。まるで修学旅行のようだ。
｢こんなんでいいかな｣
｢ハーイ、撮りまーす｣
｢良かったら撮りましょうか｣
｢是非、お願いします｣
｢エーと、この辺りで大丈夫ですか｣
｢いいえ、もっと木が全部写る様に撮って欲しいんですけど｣
｢分かりました、じゃあこれぐらいかな、では撮りまーす｣
｢ありがとうございました｣
｢いいえいいえ、どう致しまして｣
山とかが好きで、富士山での初日の出を見れなかったのを本当に悔しく思っていたのを理解するには余りにも
容易だった。あの時以来たぶん、訪れていなのは何らかの事情があるに違いないと。だからといって
今ここで聞き出すには余りにも不適切に思えた。それと急に胸がいっぱいになり始め
頭の中が彼女で溢れんばかりになっていたのだ。
2009-08-25 07:21
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コメント(7)
釣られクマ様_ナイスをありがとうございます。
xml_xsl様_ナイスをありがとうございます。
ｓ-ｔｓｕｋａ様_ナイスをありがとうございます。
by EF135L (2009-08-25 14:37)
富士山の初日の出はね。朝霧高原の西にある花鳥山脈の山麓の「田貫湖」というところから見るのが一番だよ。
by U3 (2009-08-25 17:15)
富士山・・・流行ってますよね
渋滞してるって聞きました
by chunta (2009-08-25 22:01)
U3様_ナイスをありがとうございます。
今度是非、行ってみます。ありがとうございました。
ｃｈｕｎｔａ様_ナイスをありがとうございます。
流行りモノだったのですか…?そういえばどこ行っても
観光バスで溢れんばかり、ですよね。ちゅうことは北海道までも?
by EF135L (2009-08-26 08:05)
見事な接写ですね！
この先が、とても気になります。
by SAKANAKANE (2009-08-27 05:18)
SAKANAKA様_ナイスをありがとうございます。
お待ちいただければ幸いかと思います?
by EF135L (2009-08-27 09:22)
ささ様_ナイスをありがとうございます。
by EF135L (2009-08-28 07:06)