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nest [凛]

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そんな夏のある日、東京から来ている女性を山の麓にある民家までの案内を頼まれていた。
何年前になるであろうか、その方々とは会っている。たぶん西ドイツ製高級車の利用であろうと思い、
その橋の袂で進行方向側へ車の先頭部分を向け待っていた。お昼にはいらっしゃるとの情報から
待ちかねていただけに、こうして迎えに出たのだがその気配は未だ感じられない。道しるべも消えていただけに
通り過ぎてしまったのであろうか。会いたかったのに。
と、その時だ、来るやに思えていた逆方向から勢いよく下ってくるRV車を一台確認するや否や
その橋を曲がって行ってしまう。ナンバーの確認は不確かながらも、その車を追尾していた。

一本道を数キロ走ったところには、道が二つに分かれていている。スピードを落とした前走車のドライバーに
挨拶を軽く交わすと同時に後を追いかけるのを促していた。

「いやー、道を間違えたみたいで戻ってきたんですよ」
「たもとに看板無かったですからね」
「無かったよ」
「まあまあ、それよりはどうです、一杯」
「いえいえいえ、今日戻りますから」
「そうなんですか、でしたらたいした物ご用意できなく申し訳ないのですが、どうかこれでも食べてやって下さい」
「うわー、おいしそう、」
「そうなんですよここの肉、昨日買いに行ったら、店の駐車場はもちろん、その店の前に走る道路、
 反対側もですよ、車が並んじゃって、店の玄関にも人の列がずらーっと連なっちゃって
 大盛況だったんですよ」
「アッ、本当だ、おいしい、炭火だからかな」
「どうぞ、ごゆっくりとお召し上がりください」
「ご馳走様です」

食事も終わり、何とかタイムの時間がやってきた。その時、前に会ったときよりも
随分と綺麗になっているのに気がついた。きっと毎晩のように愛され、あれ、左手薬指にリングは見られない。
そんな馬鹿な、こんなにも美しく、綺麗になったのに。就職当事に見た彼女にまだ
可愛かったには違いないが若さが勝っていた気がする。それが今では
いわゆる女の色気を感じさせるようになっていた。お年も三十を越したから不思議ではない。
この時にふと失敗に気がつく。カメラを持たずに来ていたのだ。恥ずべき行為なのかもしれないが、
カメラを持ちたくない理由がそこにはあった。
タグ:セミ
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コメント 8

井関 太郎

それはそれは…
by 井関 太郎 (2009-08-23 09:38) 

ささ

鬼も十八、番茶も出花☆ といいますが。
実は女性は30前後が一番、輝く時期かもしれません。
by ささ (2009-08-23 10:28) 

EF135L

井関太郎様_ナイスをありがとうございます。
相談に乗っていただけます?

xml_xsl様_ナイスをありがとうございます。

ささ様_ナイスをありがとうございます。
実感として感じさせられる機会は多々ありますね。同感します。
by EF135L (2009-08-24 09:11) 

EF135L

s-tsuka様_ナイスをありがとうございます。
by EF135L (2009-08-24 15:07) 

U3

色気のある女性はいくつになってもいいものです。
by U3 (2009-08-24 16:00) 

EF135L

U3様_ナイスをありがとうございます。
やっぱりそう思われます?
by EF135L (2009-08-24 16:13) 

EF135L

スクルフ様_初めまして。ナイスをありがとうございます。

PAPA様_ナイスをありがとうございます。

by EF135L (2009-08-25 07:24) 

EF135L

SAKANAKA様_ナイスをありがとうございます。
by EF135L (2009-08-27 07:21) 

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