信用金庫への就職が内定した。まだ学生ではあるが、その内定者達は集めらた。
「ちーす、」
「どうだい、この前あれからどうした」
「オッ、あれからな・・・」
彼等は学生時代からの知り合いでもないらしが、気心の知れた会話からは孤独感も漂った。また一方で
圧倒的な女性数において、とか言っても倍にも満たないが、心おどろされるものを感じていた。
当然かの如くその彼女等からもこの意図は感じ取れるが、気恥ずかしい様子にも受け取れていた。
「初めまして、今日から君達へ学校では教えていない専門知識について講義をさせていただく山田です。
 先程お配りをしたプリントですが、最後のページにある空白部をメモ代わりに利用してください。
 エーとそれでは先ず、
 最初のほうは常識的な部分ですが再確認の為にも、社会人としてとるべき行動について書いてああります。
 読んでおくように。なお最終日には、本採用試験が待っています。これを合格をしないことには
 金銭を扱う業務に就く事は出来ません。悪しからず。それでは今から講義を始めたいと思う。先ず最初に」
 知らぬ間に、就職内定者なら必ず通るはずの講習会への仲間入りをしていた。今後の資格テストが
 不合格であったならば、今までを全て不意にする。就職先を改めて探さねばならない事態に陥るのだ。
「大変ね、学生の時に勉強なんかしてないから大変でしょう」
「学校では教えてない、経営学部だったらたぶん少しぐらいは教えてた、かもしんないけど
 経済ではまるっきり教えてないことばっかりだから大変だよ」
「そうなの、いい気味ね」
「エッ、なんか言った」
「べーつに、頑張ってね。銀行員さん、あっ、まだ将来のか」
「そういうこと、悪いけど遣ったら帰ってくれる」
「アーラ何、早くも冷たいのね。そんな事じゃ女に嫌われるわよ。それでも銀行だからって
 女性が多いから異常に頑張っているって鷲田なんかが言っていたけど、本当みたい。
 私というものがありながら。くすん」
「バーか言ってねぇで、早くそこへ横になったら」
「やっぱり私のこと、体目当てだけだったのね」
「そうそう」
「だったら今日、私、帰るね。明日もいつもと同じでお弁当持ってくればいいんでしょう」
「そうそう、
 オッとところで、今日はごめん。俺、どうにかしていた。許してちょんまげ、ありがとうね。
 明日もよろしくお願いします、お休みなさい、バイバイ」
険しい山が待ち構えているのは先刻ご承知だ。それでも今、目の前にある雪だけは消え失せようとしていた。