何時の日にも旅とは突然にやってくるものだ。
「伊吹山へ行こう」
「何処それ?滋賀県で日本百名山の一つなんだよ」
「でもなー、今からかよ、ちと遠いじゃ、ありません」
「千円で乗りほうだいだし、運転変わるから、行こう」
「俺の口座から引き落とされるのに、でも、マッ、良いか!ネタも増えることだし」
これで二人は予想をもつかぬヴァカンスを楽しむはずだ。

「アレー、料金所だ、ETC使えるかな」
「さすがにここまでは手が回らないんじゃないの」
「そっかー、残念。ところでおいくら」
「軽じゃないし、あっ、あったー、三千円みたいよ」
「用意して」
「分かった」
「でも高いんじゃないですか」
「ここなんかだと雪積もるし、きっと維持費に必要なのよ」
「でも意外と込んでるよな」
「そうね、連休だし、人込みだとインフルエンザ怖いし、関西近辺の方が手軽に来たんじゃないの」
「ご苦労様です、ありがとう」
「多少路面は荒れているけれど、なかなかのワイディングロード、だよね」
「あんたまたへんな気、起こしてるでしょう」
「何をバカなことを仰いますやら。へんな気なぞこれぽっちも、増してや貴女というお方を御側に置きながら」
「オートマなのに、そのシフトに置いたその手はナンなんでしょうかねー」
「いやこれは、1500ccでしょうこの車。二人乗っているし踏ん張り利かないと上り難いかなーと思って」
「アレー、さっき高速ではこの車ターボつきだから百越してからもらくらく追い抜けるんだよ、とか言って
 自慢してたでしょう。でーも、追い抜かれるのを横目に、わけぇなあいつら、今ご時勢、捉まったら
 罰金はたけぇし簡単に免許はなくなるぜ、命知らずめがとか言って、トールゲートから進入してきた
 おっそい車を見て、ターボはこんな時に使うんだ、って加速した時には
 やるじゃん、少しは進歩したじゃん、と思ったけど、結局は変わってないんだ」
「そうかもな、でも一つ変わったでしょう、だって今直ぐ側に座っているじゃん」