「99年に大阪フェスティバルホールまで達郎さんを見に行ったわけ」
「居たのに、声をかけてくれればよかったのに」
「オウ、ま、その当時はいろいろあってな。その会あったか人妻とも御知り合えたし。どうしてんだろうかな
 今度聞いた住所へまた、連絡をしてみようかな、迷惑だろうな」
「決まってるじゃん。さすが元、もしかして今も色事氏。それどどうだったのよ、上手くいった」
「お前な、いつの時代の奴だ。ウソだと思うだろうけど、
 コンサートさえ始まらなかったならあのままホテルのラウンジから
 部屋の予約、使用とエスカレートしてだな」
「それからそれから」
「お前は鷲田か」
「田中だ」
「そうかい、エッ、どこまで言った」
「ホテルへ連れ込んだところまで」
「互いに目と目は見つめ合い、でも子持ちなんだべさ」
「残念ねー、同情しちゃうわ」
「ありがとう。しかし君は性根が座っているって言うか、たいていの事には動じないって言うか」
「皆からよくそう言われる、でも本当は心の中じゃ」
「平気なの」
「そうなの、長かったわ、あの月日。毎朝毎晩、修行に次ぐ修行」
「お前は修道女か」
「いや別に何も」
「だったらいいんだけど。そうだ、今度さ、どこかへ行こうよ」
「罪滅ぼし」
「そういった意味も含めて、居酒屋系へでも」
「聞いてあげようかな、お食事系でもいいけど。この前出来た、改装かな、イタリアレストランで良いわ」
「じゃあ、忘れなかったら予約入れておくよ」
「私入れとく、今度の土曜日ね」
「……」
約束は果たされた。この時に、その口が災いしてか、自らに大変なプレッシャーを更に与えていた。